Story
二年半の、改修
自分たちの手で、もう一度
私たちがこの場所と出会ったとき、建物は、取り壊しが検討されていました。長く使われていなかった、古い工房。それでも、ひと目で心を惹かれました。雄大な富士山を正面に望み、世界からぽつんと切り離されたように静かで、時間が止まったような——そんな空間だったからです。
東京と山梨を行き来しながら、改修が始まりました。まったくの手探りで、二年半。壁も床も、天井も、できるところは自分たちの手で、ひとつずつ直していきました。
古い建物には、古いなりの良さがあります。がっしりと組まれた梁は、隠さず、そのまま見せることにしました。もとからある木や建具で使えるものは、できるだけそのまま活かしながら。急がず、この建物が持っていた表情を、消してしまわないように直していきました。
正直なところ、思っていたよりも、ずっと大変な道のりでした。ようやく組み上げた場所で問題が見つかり、つくったばかりのところをすべて壊して、間取りから作り直したこともありました。東京との往復を続けながらの作業は、時間も体力も少しずつ削っていきます。冬の工房は底冷えして、本当に終わるのだろうかと、心が折れそうになる日もありました。それでも、少しずつかたちになっていく建物を前にすると、また手を動かしたくなる。その繰り返しの、日々でした。
いまも、直したいところは尽きません。完成させることよりも、手を入れつづけること。それもまた、この場所との付き合い方なのだと思っています。