How Cheese is Made

チーズは、
こうしてできる。(モッツァレラ編)

チーズは牛乳から発酵によって作られます。ここでは、その作り方をご紹介します。

生乳100リットルからできるモッツァレラは、10キロほど。 残りはホエイ(乳清)として出ていきます。 チーズづくりとは、発酵を見極め、牛乳の中にある固形分をうまく分離させる仕事です。

ここでは、molqの工房でつくっている モッツァレラ を例に、 9つの工程をひとつずつ見ていきます。


鍋に入れた生乳を、火にかけながらかき混ぜて温めているところ

01

加温

新鮮な牛乳を低温殺菌し、乳酸菌が働ける温度まで冷却して保持します。

モッツァレラに使うのは高温乳酸菌。その温度は人肌より少し温かい、だいたい40℃前後です。

温めた乳に、乳酸菌の粉を振り入れているところ

02

乳酸菌をいれる

ここから、発酵がはじまる。

温まった乳に、乳酸菌(スターター)を加えます。乳酸菌は牛乳の中の乳糖を食べて、乳酸を出します。

乳酸が増えると、乳は少しずつpHが酸性に傾いていく。この「酸っぱくなっていく流れ」をしっかりと見極めなければ、美味しいチーズはできません。

発酵を待つあいだ、鍋の中の乳の状態を確かめているところ

03

発酵

温度をキープしながら、じっくりと待ちます。

乳酸菌が乳糖を食べ、pHがゆっくり下がっていく時間。

見た目はほとんど変わりませんが、少しずつヨーグルトのような香りがしてきます。温度を保ち、pHを測りながら、頃合いを待ちます。急ぎたくなる工程ですが、急げません。

鍋に溶かしたレンネットを注ぎ入れているところ

04

凝乳酵素(レンネット)をいれる

液体だった乳が、かたまりになる。

レンネットは、乳を固める酵素です。もともとは子牛の第四胃からとれるもので、キモシンというたんぱく質を主としています。いまは微生物由来や植物由来のものも使われます。

牛乳の中では、カゼインというたんぱく質が細かい粒になって漂っています。レンネットはその粒の表面を切り、粒どうしが手をつなげる状態にします。

加えて静かに待つと、20〜30分ほどで鍋いっぱいがプリンのように固まります。これをカード(凝乳)と呼びます。

固まったカードを、専用の道具で格子状に切っているところ

05

カッティング

切る大きさで、チーズの硬さが決まる。

固まったカードを、刃で格子状に切っていきます。切った断面から、うすい黄緑色の液体がにじみ出てくる。これがホエイ(乳清)です。

モッツァレラのカードカットはヘーゼルナッツ大と文献にはよく書かれていますが、工房によってまちまちだと思います。

カッティングが終わったら、切ったカード同士がくっつかないようにゆっくりと混ぜます。

ここが分かれ道 細かく切ればホエイがよく抜けて硬いチーズに、大きく切ればしっとり柔らかいチーズになります。ここで水分量が決まり、それがそのままチーズの硬さになります。

鍋を傾けて、カードから分かれたホエイを別の容器に移しているところ

06

ホエイ排出

牛乳の大部分は、ここで出ていく。

pHから頃合いを見定めて、分離したホエイを排出します。鍋に残るのは、白いカードのかたまり。

生乳100Lからは、約80〜90L近いホエイが出ます。チーズになるのは、ほんの一部です。

ホエイからは、リコッタチーズをつくることができます。

molqでは、このホエイの一部からリコッタチーズをつくります。残ったぶんは、養豚の飼料として引き取っていただいています。ミルクの恵みを、できるだけ余さず活かすために。

ホエイのゆくえ
ホエイを抜いたあとのカードの状態を、手で確かめているところ

07

さらに発酵

この日いちばん、神経を使う時間。

残ったカードを積んで、そのまま置きます。乳酸菌にもう少し働いてもらい、pHをさらに下げていく時間です。

モッツァレラの場合、適切なpHでなければ、次の湯練りでカードは全く伸びません。

その瞬間を逃すと、すべてが台無しになるので、とても神経を使います。

適切なpHになったら、すぐに冷却するなどして発酵を止めなければなりません。

熱いお湯の中で、伸びるようになったカードを引き上げているところ

08

湯練り

ちょうどいいカードだけが、餅のように伸びる。

80〜90℃のお湯にカードを入れて、練ります。頃合いのpHになったカードは、ここでとろりと伸びはじめます。

手早く伸ばして、たたんで、また伸ばす。繰り返すうちに、たんぱく質が一方向に並び、モッツァレラ特有の繊維の層ができていきます。さけるチーズのあの層は、この作業で生まれます。

イタリア語でパスタ・フィラータ(糸を引く生地)。カチョカバロやスカモルツァも、この仲間です。

熱いカードを手でちぎり、丸めて冷水に落としているところ

09

成形

名前のとおり、手でちぎる。

熱いうちに、手でちぎって丸めます。冷水で締めれば、できあがり。

「モッツァレラ」という名前は、イタリア語の mozzare(ちぎる)から来ています。名前そのものが、この最後の動作を指しているのです。

Glossary

チーズづくりの言葉。

ホエイ 乳清・にゅうせい
乳を固めたときに出てくる、うすい黄緑色の液体。牛乳の8〜9割はこれになる。たんぱく質やミネラルが残っていて、リコッタチーズや飼料に活かされる。
カード 凝乳・ぎょうにゅう
レンネットで固まった、プリン状のかたまり。これを切り、水を抜き、練ったり熟成させたりしたものがチーズになる。
レンネット 凝乳酵素
乳を固める酵素。もともとは子牛の第四胃からとれるもので、キモシンというたんぱく質を主とする。現在は微生物由来・植物由来のものも広く使われる。牛乳のたんぱく質(カゼイン)の粒どうしが結びつけるようにする働きをもつ。
乳酸菌 スターター
乳糖を食べて乳酸をつくる菌。乳を酸性に傾け、雑菌が増えにくい環境をつくると同時に、香りと食感の方向を決める。どの菌を選ぶかも、チーズの個性に影響を与える。
pH ピーエイチ
酸性・アルカリ性の度合い。数字が小さいほど酸性。チーズづくりでは、この値を見ながら次の工程に進むタイミングを判断する。
パスタ・フィラータ Pasta filata
イタリア語で「糸を引く生地」。熱いお湯の中でカードを練り、伸ばしてつくるチーズの総称。モッツァレラ、カチョカバロ、スカモルツァなどが含まれる。

同じ手順でつくっても、その日の乳、気温、湿度で、できあがりは変わります。 だからこそ、毎回おなじものをつくるのは難しく、面白い。